五段階計画にビジョンがあるという幻想

 五段階計画とかビジョンとか、最近はそういう言葉がキーワードになっているようなので、自分なりの考えを書いておこうと思う。
 そもそも五段階計画とはなにか。
 結論から言ってしまえば、それは強化の計画ではないというのが僕の考え。
 事実上の倒産状態まで追い込まれていた北海道フットボールクラブが、なんとか存続するためのリストラの計画であったというのが真相に近いと思うから。
 
 
 少しだけチームの歴史を振り返ります。
 岡田武史氏が札幌の指揮を執っていた時期、氏の古くからの友人である小山哲司氏をチームの強化部長に呼び寄せました。
 小山氏は岡田武史がチームを去った後もその後も数年、強化部長としてチームに残ります。
 散々な2002年を経験し、2003年、その小山氏も横浜Fマリノスに去り、強化部長は城福敬氏に交代するわけです。
 ちなみに2003年のチームは、99%小山氏が編成したとのインタビューがこちらにあります
 この年、札幌は1年でのJ1復帰を目指し、ウィル、ホベルッチ、ベッドという他のJ2チームがうらやむ補強を敢行し、そのうえ、監督には実績のあるジョアン・カルロス氏を招聘しています。
 ところがそのブラジルトリオがシーズン中に全員居なくなるという異常事態に接し、ビタウ、ウリダ、アンドラジーニャなどを次々に補強しますが、結局J2中位に甘んじただけでなく、この年だけで3億円近い赤字を出してしまいます。
 債務超過も4億をはるかに超え経営的には倒産状態。
 一年でのJ1復帰が叶わなかったことでJリーグからの分配金も削減され、数年後には行政からの補助金も打ち切られる見込み・・・という危機的状況で打ち出されたのが五段階計画です。
 コンサドーレ札幌強化計画(いわゆる五段階計画)にも次のように記載されています。

1)最大の問題は、債務超過状態
2003年度見込で5 億4千百万円の債務超過
収支状況から見て早期解消の可能性は少ない
経営的には事実上の倒産状態にある

 五段階計画が発表された状況というのは、こういう状況だったことを忘れてはいけません。
 チームを存続させるただ一つの方法は、選手人件費を大幅に削減し、収支均衡を図ることしかありませんでした。
 こうして2004年には今野泰幸を移籍させ、高年俸選手を放出し、外国人選手が0人、新卒8人という体制にし、移籍金収入もあったことで3億円以上の黒字をだしたのです。
 その後、さらに数年を経て、五段階計画には触れられてなかった減資を実施することが出来、ようやく普通の経営状態に戻ったわけです。
 だから、今年の減資により五段階計画は役割を終えたのかな・・・?と考えていました。
 
 
 ところが柏戦の後、村野GMが興味深い発言をしています。
 それは「予算と強化の二本立て」という部分。

村野 数字的に書くと、お金の部分も有りますので・・。まあ五段階でないというのは間違いないです。五段階というのは、「安定したチーム」ですから・・。3.5とかですね、4とか・・・。これでちょっと一歩後退かなというようなイメージです。
 予算と強化の二本立てで出来ておりますので、それで比較すると判ると思います

 (引用元:http://www5.famille.ne.jp/~report/2008-10-19.html)
 
 つまり、クラブは再び債務超過に陥らないために、五段階計画を経営の指標として捉えていることが伺えます。
 チームが存続するためのリストラ計画。
 その結果のチームの若返りと収支均衡。
 そして戦力アップのための若手育成。
 それはまさにプロビンチャとしての姿に他なりませんし、現実的にコンサドーレ札幌が存続していくためには、やはりそれ以外の選択肢はないのでしょう。
 だから僕はクラブが五段階計画に留まっていることを否定しません。
 
 
 しかし、なにか壮大なビジョンがそこにあると考えている人がいるならば、僕は「それは幻想じゃないか?」と思うのです。
  
 だから、ビジョンをクラブに求めても出てこないような気がします。
 というよりもビジョンを求められてクラブは困惑しているのでは、と想像しています。
 なぜならば、クラブの経営資源は限られている上、減少傾向なのだから、これまで通り、ユース世代からの若手の育成に力を注ぎ、J1再昇格を目指すとしか答えようがないから。
 
 
 
 クラブの中に弱さがあり、それを克服しなければならないというのは全く同意。
 でも、それは一人一人が自分の責任をきちっと果たすというレベルの話から始めなきゃいけないんじゃないかな。
 ビジョンなんてレベルには到達していない気がします。
 
 ちなみに、五段階計画にはこういうことも書かれています。

①負の遺産の一掃(達成済み)
②経営コストの最小化(?)
③新資本の増強(一部達成?)
④継続可能な収支構造(?)
⑤選手育成を基本としたチーム力(達成済み)
⑥プロとして安定したフロント(?)
⑦社員の意識改革(?)

 7番・・・・。

「五段階計画にビジョンがあるという幻想」への1件のフィードバック

  1. 「五段階計画」は経営指標

    ※本日2投目です。 最近「今のコンサドーレ(or HFC)にはビジョンがない(見えない)」というような意見をよく聞きます。 また,例えば今年春の減増資に連…

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