目的と結果

 北朝鮮戦。
 日本がやるべき大目的はドイツ大会に出場することを決めることであった。これは大目的である。そのためには、引き分け以上の結果が必要であった。
 また、大目的の実現のための手段は、小目的になりうる。昨日の試合に引き分け以上の結果を出すことは小目的であり、その実現のために、また様々な手段を講じるわけである。
 よって、手段や小目的が大目的に優先することはあり得ない。
 日本は、ドイツ大会に出場する(大目的)ために、目の前の北朝鮮戦に勝つか引き分ける(小目的)ことができればよく、そのために与えられた状況の中で、リスクを冒さない戦いを選択すればよい。(手段)
 それが北朝鮮戦のすべてである。そういう戦い方が出来るのは、ここまでの四試合で勝ち点を積み重ねてきた結果であり、その状況でもっとも可能性の高い戦いを選択すればよい。
 しかし、世の中には様々な考え方を持つ人がいる。店には「日本人を拉致した北朝鮮に絶対に勝たなきゃいけない」と大声で騒いでいた女性がいた。
 負けるわけにはいかない試合。それはあくまでもドイツ大会への出場を決めるため。
 仮に北朝鮮にサッカーで勝って拉致事件が解決するなら、我々は同胞のためにも絶対に勝たなきゃいけないだろうが、しかし現実には、せいぜい、拉致事件と直接的には関係がない我々の溜飲を多少下げる程度の効果があるにすぎない。拉致問題のために負けるわけにいかない訳ではないのである。
 「拉致事件があるから日本は北朝鮮に勝たなきゃいけない」と主張すること自体は個人の自由であろう。しかし、ワールドカップを目指す日本サッカー界の大目的、家族の奪還を目指す拉致問題被害者の大目的、それらのまえに、的をはずした野次馬女の主張のなんと哀れで虚しく、そしてスポーツ的でないことか。
 昨日の試合の間、スタジアムそばで太鼓をたたき、日本代表にコールを送り続けたサポーターたちがいた。その声はTVの集音マイクを通して日本にも届いた。選手たちにもきっと届いただろう。ワールドカップに出場させるため、そしてそのために目の前の試合でそれを決めさせるために。
 僕は、生観戦もできないのにバンコクまで応援にいったサポーターたちに素直に感動する。
 それはスポーツバーの野次馬女と100%真逆だと思う。

「目的と結果」への2件のフィードバック

  1. 「スタジアムに少しでも声の後押しを…」と、太鼓を叩いたサポーターには、本当に感謝の気持でしたね

    見返りを求めていない純粋な気持の人と、拉致した北朝鮮とサッカーをしてる選手とは別なんだと考えられないひとが、同じ予選を観てるのがとても変な感じです

    じつは此れも偏見に成るのかも知れませんが、私はW杯出場のキップをゲットした今でも、どうしてもジーコジャパンでは不満なんですよね(笑)
    大黒がダメ押しの得点を決めた時「やったぁ!」と大声出して喜んだのは、W杯出場を決めた事じゃ無く、ジーコに「見たかぁ~!」と言う気持だったんですよ
    広く全てのJリーガーにチャンスを!何て事は、嘘でしょう?
    まっ、喜んだ後の方がもっともっと大変な重責が圧し掛かちゃったんですよね>ジーコさん

    今回、一番大きな拍手を貰うべき人達は、塀にへばり付いてコールし続けたサポーターですよね♪

  2. 僕もその通りだと思います。試合を見ることが出来ないのにバンコクまで行ってスタジアムの外で応援し続けた人たちの美しさと大使館関係者といって大挙してスタジアムの中に侵入し大騒ぎした某国人のその精神的な美しさの差は見事なまでに両国の国民性を表していると思います。

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